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9.28豪雨災害 昭和58年(1983)9月28日

提供:国土交通省木曽川上流河川事務所・丸山ダム管理所

災害の概要と被害

昭和58年9月28日、観測史上最大となる洪水は、中山道の宿場町として繁栄してきた中心街を
一瞬のうちにのみ込んだ。

 台風10号によってもたらされた木曽川の氾濫によって中流域の地域は軒下まで達するほどの浸水となり、岐阜県美濃加茂市では総世帯数の約15%、坂祝町では総世帯数の約12%が甚大な被害をこうむりました。浸水面積は両市町あわせて290ha、被害総額218億円という未曽有の災害となりました。洪水の被害は、この地域だけにとどまることなく木曽川・飛騨川上流部までに及び、岐阜県全体の被害額は約527億円にものぼっています。

美濃加茂市の浸水範囲

浸水状況(可児市内)

浸水状況(美濃加茂市内)

●木曽川の出水状況

犬山水位観測所 (国土交通省) ※警戒水位等は、当時の対象水位を示す。

●総雨量分布

気象庁


夕方頃より浸水が始まり、河川水位の上昇にともなって拡大。29日未明には最大となる。
夜間の災害は、避難を一層困難なものとした。

浸水状況(美濃加茂市内)

坂祝町の浸水範囲

浸水状況(坂祝町内)

消防団による救助活動(坂祝町内)

夜間は避難を困難に(美濃加茂市内)

可児市からの応援による救助活動

夜間は避難を困難に(坂祝町内)

 木曽川の水位上昇とともに、28日19時過ぎには避難命令が発令され、広報車の呼びかけとともに地域住民の避難が始まりました。
 避難にあたっては、各地で消防団による懸命な救出作業も見られました。
 美濃加茂市では1,500名にも及ぶ市民の避難が行われる中、不幸にも1名が逃げ遅れ、この災害での唯一の犠牲者となりました。

●一般被害状況

わが国の災害誌 第3編

都道府県名 死 者
(人)
行方不明者
(人)
負傷者
(人)
床上浸水
(戸)
床下浸水
(戸)
全壊・流失
(戸)
半 壊
(戸)
岐阜県 4 1 4 2,803 1,742 9 19

大雨の被害は木曽川・飛騨川沿いの市町村にとどまらず、愛知県の名古屋市や瀬戸市にも
甚大な被害をもたらした。

 台風10号の影響による洪水被害は、美濃加茂市・可児市・坂祝町・八百津町にとどまらず、木曽川沿いの恵那市・中津川市などや、飛騨川沿いの白川町・高根村など、岐阜県の広い地域に及びました。また、愛知県の名古屋市・瀬戸市では、時間雨量72.5mm(名古屋)によって甚大な浸水被害や鉄砲水などが発生、死者・行方不明者を出しています。

泥の街を行き交う市民(美濃加茂市内)

泥沼化した街(可児市内)

倒壊した家屋(坂祝町内)

被災した家の片づけをする市民(美濃加茂市内)

橋梁の流出(中津川市)


復旧・復興

近隣市町などの応援を得て、人々は地域総動員で後片付けにあたった。

 朝になると、人々は息つく間もなく泥まみれになった街や家の後片付けと清掃活動に地域総出で取り組みました。また、近隣市町や各種団体などからも献身的な応援の手が差し伸べられました。
 甚大な被害をこうむった美濃加茂市と坂祝町には、災害救助法(*1)が適用されることとなりました。

*1 災害救助法
自然災害があったとき、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力を得て、応急的に必要な救助を行う法律で、被災者の保護と社会秩序の保全を目的としています。

地域総動員での清掃活動(美濃加茂市内)

地域総動員での清掃活動(坂祝町内)

各種団体の支援による清掃活動(美濃加茂市内)

街角に積み出された水害ゴミ(坂祝町内)

屋外に出された水害ゴミ(可児市内)

市役所に設置された仮設電話(美濃加茂市内)


丸山ダムの操作

計画規模を超えた記録的な洪水によって、丸山ダムの能力は限界に達するまでにいたった。

 丸山ダムでは、ダムへの流入量が計画流入量6,600m³/s(*1)を上回る既往最大流入量8,200m³/sの出水となりました。丸山ダムの洪水調節によってダム下流での水位低減は図られましたが、長時間続く洪水によってダムの貯水位が満水状態となり、洪水調節機能も限界に達しました。
 このため、ダム管理所が始まって以来初となる非常用ゲートの操作が行われ、流入量を超えない範囲での下流への放流が実行されました。

*1 計画流入量6,600m³/s
新丸山ダムの建設事業計画では、計画流入量を10,000m³/sとし、7千2百万m³(現行2千17万m³)の治水容量となっています。

昭和31年4月のダム管理所始まって以来の非常用ゲートの操作(写真は、昭和58年9月)

9月28・29日の洪水の概要(管理開始後最大)

丸山ダム湖一面を覆った流木

昭和58年9月、出水で被災した丸山ダム減勢工右岸側岸部

木曽川左岸側から見た木曽川の出水状況(可児市)


復旧 激甚災害特別緊急事業

 9・28豪雨災害時、木曽川中流域の美濃加茂市、坂祝町の河川堤防は堤防高が計画高水位を大きく下回るなど、未整備な状態となっていました。このため、地盤の低い箇所から水が入り、木曽川の氾濫によって大きな災害に見舞われることとなりました。
 そこで、この災害を契機として緊急かつ抜本的な河川改修工事の必要性が見直されることとなり、激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)(*1)が採択され、築堤及び護岸工事が実施されました。
 また、激特事業だけでは、その効果が十分に発揮されないことを考慮して、下流部のすりつけ区間及び同様の浸水被害があった対岸の可児市土田地区並びに、坂祝町の一色地区・取組地区・勝山地区も緊急改修計画地域に編入し、激特事業と併行して短期間で集中的な工事が行われました。

*1 激甚災害対策特別緊急事業
この事業は、台風などの洪水によって激甚災害が発生した地域について、治水対策を緊急に行い、おおむね5ヵ年で完成させることによって、再度の災害発生を防ぐ事業です。
激特事業 緊急改修
L = 4,833m
(美濃加茂市 L = 3,046m、坂祝町 L = 1,787m)
昭和58年~昭和63年
L = 650m(可児市土田地区 )
L = 1,730m(坂祝町一色地区、取組地区、勝山地区)
昭和58年~平成6年

提供:国土交通省木曽川上流河川事務所・丸山ダム管理所


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